7.06.2013

40_日本言論知図_02

<ベーシックインカム>

「所得の多寡や財産の有無を問わず無条件に支給されるベーシックインカムは、受給資格を審査するコストがかからない利点に加えて、年金や子ども手当て、失業給付といった社会保障制度をベーシックインカムに一本化すれば、手続きを簡便化することができ、大幅な行政のコスト削減が期待できる」
ベーシックインカムの導入メリット(の一部)についての一般的な説明

「 給付の根拠を働くことや働こうとすることから切り離してしまったとき、残るのは日本人であるという『血の論理』しかない」
濱口桂一郎(労働政策研究・研修機構統括研究員)の発言の引用。


ひとつひとつのアジェンダについて、ともに合理的な賛否両論を掲載して、読むヒトの思考フレームを押し広げるタイプのすばらしい本。

前者から読み取れるのは、社会保障制度全体の予算のどれだけの部分をその運用費(人件費、システム、建造物、告知広告)が占めているかを考えるとぞっとします。例えば生活保障受給者の資格審査や認定やケアワーキングにかかるコストと受給額のバランスはとれているのかという発想。国産農作物の(農家の収入を一定に保つための)健全な流通のために30万人のJA職員に給料が支払われているという着眼点。

後者は、経済学から離れた俯瞰視線。99.9%の人々は、生物学的欲求が満たされた段階でアイデンティティの充足を強く希求します(スキップできません)。我が国の社会では伝統的に社会におけるポジションがこれを充足し、社会的ポジションは職業(の貴賎通念、年収の多寡、就業の有無)によって支えられます。問題になるのは、イタリアやフランスや日本に現在見られるように、経済成長の構造的座礁によって、職業にリンクしたアイデンティティを奪われた者が、個人の欲求レベルでアイデンティティを充足するためにナショナリズムに傾倒し、その結果政治が右傾化すること。

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