細谷:つまり神様みたいに、宇宙全体を外から見ているような記述の仕方をするのが間違っているのです。我々は宇宙の中にいるのだから、まず宇宙を我々という小さな存在と、残りの大宇宙とに分けて、2つの間の相互作用を物理的に考えて理論を作るべきだと思います。実際、宇宙はそういうふうにしか観測できないのですから。
茂木:確かに、実際の観測ではそうなりますよね。今、物理学にも幾つか未解決問題があります。それは物理学理論の前提となっている、神が俯瞰しているかのような宇宙の見方を根本から変えないと、解決しないかもしれません。
細谷:そうかもしれません。結局、物理は最後に測定をして勝負せざるをえないのだから、そこから出発しましょうよということです。まず神様の理論を作って、それを人間が認識したらどうなるかを考えるんじゃなくて、最初から人間の認識が組み込まれた理論を作ったほうがいい。
茂木:お話を伺っていて、1905年のアインシュタインの特殊相対性理論の論文を思い出しました。あれも、時間の同時性を、認識の方面からアプローチしているような..
細谷:まさにそうだと思います。あれは2つの異なる場所にある時計を、それぞれの場所にいる人が光で情報をやりとりして合わせるわけです。すべては物理的な操作だけで記述され、時というものが客観的にあるわけではない。宇宙も同じやり方がよいと思います。
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