7.07.2013

40_日本言論知図_09

<戦争>

現在、戦争を抑止している構造とは ..

・経済効果の消滅_戦争が軍需産業を活性化させ、その結果全体に経済効果を波及させる、という図式はベトナム戦争以降の冷戦における軍備拡大競争の結果、常に(平時に常備軍の)軍備が十分に肥大化していて、戦争が起こってももはや掘り起こされるべき新しい需要は存在せず、戦争による経済的メリットはない。
「『経済効果』というと不思議ですが、確かに『何もしない軍隊』に価値がある訳です。しかし何もしない訳にはいかないから、戦争の代わりに警察行為を行なっている」
「石油の場合、本当に利ざやが取れるのは精製や輸送、そして何よりも取引をめぐる金融です。イラクを占領したらイラクの石油がタダで使えるかのように考えるのは、全近代的な誤解です .. 労働者を奴隷に出来るわけでもない」
「2000年代のアメリカの戦争というのは、本当は得じゃないことを得だと思い込んで、何重にも間違えてやってしまったということです」

・世界のほとんどの国の間で、多国籍企業の進出による価値観の均一化、生活様式の均質化、経済取引の緊密化が起こり、精神的にも物質的にも敵対の契機が消滅した。いわゆる『マクドナルド理論(マクドナルドがある2国間では戦争が起きない)』。

・戦争行為は帝国主義時代には低コストであったが、もはや非文明国を占領するような低コストの戦争はあり得ず、戦勝によるメリット自体が割に合わないものになった」
「戦争が経済全体を良くするなんて考えをまじめに信じている人はもういないでしょう」
「直接的な利害が絡んでいる軍需産業以外にとっては、経済的な問題から戦争を望むインセンティブなんてあり得ません」

である。
それでは、現在の大国の戦争志向の動機付けは ..

・米国がイラクを攻撃した理由は、「これからは(イスラム圏を含む)世界に対して警察行為としての戦争をやっていけるという、アメリカの国際的なプレゼンスの維持だったのではないでしょうか」「2000年にフセインは、石油代金のドルでの受取りを全廃し、ユーロでの支払いのみ受け入れるという宣言をし、アメリカはドル基軸体制というルールを守るという強い動機があった」

・中国は尖閣諸島の資源の囲い込みをやる恐れがある。なぜなら、「中国は占領地区の資源を国有化することがまだ可能」だから。なぜ「まだ可能」かというと、「いまだ政治権力が富の一番の源泉」であり、純粋な経済活動が油田それ自体から富を産まないとしても、そこに発生するブラックな利益供与による富を十分に期待できるから。だとすれば、日本がとるべき態度は領土としての尖閣諸島を守ることではなく、これをめぐる複数段階の取引きにおいて最大の利益をあげることの出来るゲームルールを築くことである。

「私たちはそうした変化の中で何とか平和の可能性を探っていかなくてはなりません。そのためにも戦争を経済的な視点から考えることは不可欠です。たとえそこから導かれるものが常識的な良識を逆なでするものであるとしても、時代を条件づけるものから目をそらすことは出来ないのです」

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