6.27.2014

chimpanzee

宮台:(比較認知心理学を研究している京大霊長類の松本博士によると)400万年前に分かれたチンパンジーと人間の基本的な違いは、チンパンジーは、いわゆるフォトグラフィック・メモリー、ある種の記憶力は人間の何倍もあるということと、それと関係するわけだけれども、チンパンジーにない能力、あるいは傾向が人間にはあって、それは、存在しない、不在のものについて、注意を集中する、たとえば嫉妬が典型です。サルは、目の前で行為を行われるときに嫉妬するけれども、不在、あるいは目に見えないところ、あるいは過去に行われたことについては一切を問わない。人間の場合はそうではなくて、過去の行いを永遠に問い続けるということをやるわけね。おなじことで、チンパンジーは、手足がもげてしまっても、それでも動かせる身体のいろんなところを使って、それで周りが喜んでくれたらそれでハッピーなんです。

神保:だから悲観しないと。手足があったらもっとこうなったじゃないか、と考える、これは能力がないっていう言い方でいいんですか?
下半身不随になったチンパンジーの話だっけ、たしか。もう、悲観に暮れているのかと思ったら、まあ、みんなにかわいがってもらえるし、むしろ身体不自由になって、飼育員にもっと優しくなるので、むしろとってもハッピーだと。

宮台:こういう議論なんです。もし手足が失われなかったら自分はもっとハッピーだった、というリグレットをするということがね、リグレットをしないようにこうしよう、というプランニングや
デザインを産むっていうね。つまり、人間社会がサルの社会と違うふうになったのは、まあそういう意味では、いまを生きないからなんだ、というね(笑)、だからその意味でいえば、逆の言い方をすると、ぼくたちがアダプテーション、いわゆる適合だけを考えて生きると、自動的に今を生きなくなるんですよ。たえずリグレットをしてね、リグレットをしないようにするにはこうしなさい、という命令に、永遠に従い続けるわけですよ。

神保:でもまあそれが、脳がここまで大きくなった理由でもあるので..。

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