「いま、なにがしたい?」
すると彼女は言った。
「蝶になって飛びたい」
蝶になりたい。確かに彼女はそう言ったのだ。
それが彼女のどんな願望を表しているのか私にはよくわからない。だけど、彼女の「蝶になって飛びたい」という言葉の唐突さが、その唐突さゆえに私をゆさぶった。
今、彼女は自分の中の、自分だけのイメージの世界で癒えているのだと思った。
そのことを素直に表明できるほどに、この瞬間、彼女は自分を好きでいるのだ。それはすごい事じゃないかと思った。自分を醜くて好きになれないと言った彼女が、蝶になって飛ぶイメージをふくらませているのだ。
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