3.16.2015

トリガー_02

いまおっしゃった地域のことで言うならば、かつて若者にとって地域ってうっとうしかったですよね、うるさいおじさん、おばさんいたしね。いま本当に いなくなっちゃったでしょ?昔ね、若者たち、ぼくもそうですけど、地方出身の若者が東京を目指した理由ってふたつあるんですよ。ひとつは「押し出し要因」 ですよね。地域がうっとうしいので、人間関係もうっとうしいから、そういうのがないところに行きたいっていうね。解放されたいっていう思いですよね。もう ひとつは、地方にないものがある、これは引き込み要因ですよね。それ両方あって、昔は地方の若者たちが東京を目指したんですけど、いまどっちも消えっ ちゃったでしょ?別に地域にいたってうっとおしくないので、むしろ地域の方がトモダチがいていいじゃないかっていいますよね。あるいはその、総ジャスコ 化っていって、どこに行ってもイオンモールとかあるので、まあ裏腹的なものは別だけれども、とりあえず市場で買えそうなものは地域で買えちゃうわけです よ。ネットもあるしね。

ネットありますものね。

とすると、都会に行かなきゃないものってないので、都会に出る必要って無 くなっちゃいますよね。それでPUSH要因もPULL要因も消えちゃったので、若者たちはそんなに都会に出て行きたいっていう思いは無くなりましたよね。 だからいわゆる地元志向って強まってるじゃないですか。それはある種、地域が空洞化したっていうのの裏返しですよね。

うざくないんだ。

逆にそこがフロンティアみたいな感じになってますよね。自分たちで作っていけるような場所っていうのが。

ただ、地域っていうのが、東京に来たらそれこそ、隣のマンションの部屋がだれだかわからないってこともありますけど、地域からもそれが、つまりうるさいおじさん、おばさんもいなくなっちゃったていうのは、なぜなんですか?

大 きな流れでいうと、わたしはやっぱり、社会の流動化って大きいと思ってるんですよ。もちろん流動化自体はね、80年代からずっと始まってますけど .. まだ当時は社会のパイが高度成長期で、まだ膨らんでた時期ですよ。そういうときにね、やっぱり流動化すると、人々は流動化に対してチャンスを求めようとす るんですよ。で、やっぱりチャンスを生かそうと思えば、個人の才能かなって思ったりするわけですよ。だけども、90年代後半くらいから、バブル崩壊した後 は、もうパイが膨らんでいない。でも流動化のほうは進んでるわけですよ。2000年を越えてから、小泉内閣になってからもっと進んでいったわけですよね。 そうすると、社会のパイは膨らんではいないのに、でも流動化はどんどん進むっていう、そうしたら、不確実性はチャンスというよりむしろリスクですよね。
つ まり、いまの自分のポジションからどうやってこぼれないようにするか。そうすると大切なのは、個人個人の個性とか能力じゃなくって、むしろ人間関係ですよ ね。周りの人間関係を大切にして、そこから自分が外されないようにしていく。そういうふうにみんな集まっていくと、安全な人間関係を作ろうとしていくの で、なるべく似た者同士でね、固まって、そこで人間関係を作って、そこでいろんなポジションを守ろうとする、守ろうとする、そういう傾向が強まっていく、 だからその、流動化が進んだことのある種の反動として、ある種の人間の内閉化みたいな症状が生じているとわたしは思います。

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