6.04.2013

29_文化と両義性



我々は通常、我々を取り巻く世界を、友好的なものと敵対的なものに分類する思考に慣れている。その上で、敵対的な世界に、我々にとって好ましからざる傾向と考える性質を次々に付託する傾向がある。こうした思考は、我々にとって全く身近な世界に対する我々の態度だけに現れるのではなく、人間の意識の展開の歴史的過程の最も早い時期の記録に残されている。人は多分その意識の現れる状態を、混沌を介して自覚してきたと思われる。混沌から身を引き離した瞬間に、彼は混沌を対象化する。混沌の対象化は、秩序の確認への第一歩であることは疑えない。シュールレアリズムが明らかにしたように、混沌こそは、すべての精神が、そこへ立ち還ることによって、あらゆる事物との結びつきの可能性を再獲得することができる豊穣性を帯びた闇である。

なんと冒頭の文章。
だれがなんと言おうと世界を揺るがした本。

「文化と両義性」 山口昌男

ghostwriter